東京労働局宛、人材派遣アンツ告発状

2009/03/02

 人材派遣サービス業アンツ遺法派遣―偽装派遣に関する東京労働局宛の告発状のコピーが手に入った。

 この告発状はいつも本紙にアンツの偽装派遣情報を提供してくれる「物流会社アテナの倉庫内軽作業中に怪我をした派遣労働者」とは別の人が作った物である。対警察ではなく労働局に宛てた物であり第三者としてであるから「告訴」ではなく「告発状」となっている。

 告発者はアンツの同業者である人材派遣会社である。派遣会社でアルバイトや派遣スタッフとして働く労働者達は、派遣会社から毎日仕事を貰える訳ではない。アンツだけに派遣登録しても1週間バイトの連絡が来ない事もままある。だから、色んな派遣会社に登録し毎日どこかしらで仕事があるようにしとかねばならない。

 だからアンツに派遣登録したアルバイトと、この告発派遣会社と登録者がダブっている事もあり、その中でアルバイトスタッフ達から聴いたアンツの悪行に、同じ人材派遣をビジネスにしている者として義憤を感じ、またアンツからビジネスの邪魔をされた事もあって告発に踏み切ったそうだ。

 告発状画像の全てをアップしようと思ったが、画像を読み進んで貰うのも骨が折れるだろうから要約する。

 告発状は以下の様に記されている。

 物流業者の株式会社アテナや、クロネコヤマトのヤマト運輸株式会社にアンツからアルバイトを派遣している。しかしアテナもヤマト運輸もアンツとの取引形態は「請負取引」だ。
 派遣ではなく請負取引なのであるから本来は現場にアンツの社員がいてアルバイトスタッフはアンツの指示によって労働作業をしなければいけない。
 しかしアンツの社員は現場にはおらず、アテナにおいてはアテナの社員、ヤマト運輸においてはヤマト運輸の社員の指揮命令下で労働しているそうだ。これを遺法派遣―偽装派遣という。

 告発者は労働基準法、派遣業法などに照らし、アンツのやっている事は法律違反だ、処罰すべきだと言っているのである。

社会保険未納している分、他の派遣会社より安いです

 また、本紙でもつねづね指摘している「アンツのような擬装請負会社は社会保険や雇用保険労災などに未加入」という問題についても、裏づけとなるような表現が。

 この告発派遣会社とアンツと掛け持ちで働いているアルバイトスタッフに、アンツの社員が「アンツへの登録移籍」をたびたび促しているそうだ。アルバイトスタッフのスカウトというか引き抜きというか、どこにでもある話だが、この際の勧誘トークが以下のようなものらしい。

「社会保険に入らず税金を免れる方法がある。●●社(告発会社)はバカだから分らないだけ(●●社にいると社会保険料分、損する)」

という勧誘トークを多くのアルバイトにしているそう。

 アンツにとっては労働者にアンツ一社にバイト登録を絞ってもらった方が都合がよいのだが、労働者としてみれば、アンツに絞る義理もない。そんなに給料変わる訳でもないのに社会保険脱税に加担させられるなんて気分が悪い、ってことで告発会社に教えてくれたそうだ。

 手口としては労働者への支払いをアクアやトライアングルといったアンツのグループ企業を複数使うことで「アルバイトスタッフの勤務形態を『社会保険料支払い義務基準』以下にする」という単純な脱法行為が基本だそう。

 また、告発会社の派遣先にアンツが営業をかけて来たことがあったそうだ。

 のちに告発会社はこの派遣先から、取引契約の交渉の際にこう言われてしまった。

「アンツは社会保険料の支払いがないから安く請け負ってもらえる。これからは●●社さんじゃなくアンツに頼むよ」

だそうだ。

 アンツやアクアやトライアングルは労働者に対して、殆ど給料明細を交付しないそうだが、ある労働者の給与明細はアンツの所得税の源泉徴収が不十分である事の証拠となるため、この告発状に添付資料として同封したそうだ。アンツの所得税の源泉徴収の違法性については次回また報道する。

(ところでアンツは本店登記においても意味不明な行為をしている。平成20年11月25日に東京都江東区門前仲町1丁目2番6号ユニオンビル2Fから、現在のアンツが本当に実在している東京都千代田区神田佐久間町2丁目13番36号藤波ビル3Fに移転したと登記し、数日後にはそれを抹消している。登記簿謄本にはアンツの本店:東京都江東区門前仲町1丁目2番6号ユニオンビル2Fと登記されている。しかしアンツのホームページには「本社:東京都千代田区神田佐久間町2丁目13番36号藤波ビル3F」と表示されている。お金をいただく取引先には、どっちが本当だと言っているのだろうか?)

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人材派遣アンツの偽装請負二重派遣シリーズ