「フリーターやニートを救う成果報酬派遣」

エスプールの「成果報酬」の帳尻はクラブ共済金−

2009/02/10

エスプールの提唱する成果報酬型派遣の実態は…

 本紙が「人材派遣アンツの偽装請負二重派遣シリーズ」をスタートさせてから、人材派遣サービスのアンツグループ以外の、派遣会社の擬装請負問題や労働災害問題が情報提供されていると先日のアンツ、ウェストサイド、クリアスは社保加入の余裕あり?(2月7日記事)≠ナも報じた。

〔※アンツグループ=アンツ(江東区門前仲町1丁目2番6号/長尾康裕社長)ウエストサイド(新宿区新宿4丁目3番31号トーサイビル1F/木村善彦)・クリアス(豊島区東池袋4丁目24番13号/中村浩樹)・株式会社アクア(江戸川区西葛西6丁目16番7号/野口浩平)などなど〕

 よせられた遺法人材派遣会社・擬装請負業者の情報に、上記のヘラクレス上場人材派遣会社エスプールの名前が出てきたものだから、???エスプールってpodcastで聴いた『フリーターやニートを救う成果報酬型人材派遣・・・』じゃなかったか?、と少し驚いた。

 上場会社の不正なんて目新しくもなく『JASDAQ上場のアウトソーシング企業、SBSホールディングスグループの擬装請負(1月31日記事)』でも取り上げたように、人材派遣ビジネスの偽装派遣遺法請負システムに関しては、大手も上場企業もないほど不正で溢れているため、エスプールに関しても、まぁそんなにキレイでもないだろとは薄々感じてはいたが。

交通費0や共済金天引きがエスプール的「成果報酬的」リスクヘッジ?

 エスプールの成果報酬の実態・告発情報はエスプール浦上社長のpodcastでのPRとはかけ離れたものだった。告発テーマも「日雇い派遣エスプールの擬装請負と共済金名目の労働者搾取について」と言うような感じだったので(エスプールは『日雇い派遣』はやらない派遣会社と言っていたのだから)、「え、エスプールが日雇い?」とビックリした。

 エスプールの売りは日雇い派遣はやらず…エスプールはフリーターやニートに人材教育を施し、3ヶ月から1年間の派遣労働を高スキルで処理させる会社≠ニいう事だった。

 思えば浦上社長が「フリーターやニートを派遣しながら教育し、稼げる一流ビジネスマンににする!」とか言ってた割には、エスプールの派遣先は倉庫内軽作業・物流運搬系単純労働といった、教育もスキルも必要ない仕事ばかりだ。

 エスプールにはヘラクレス上場(ヘラクレス:2471)企業という肩書きがある事を除けば、本紙糾弾中のアンツグループと同じ、どれだけ単純労働者から搾取できるかが鍵となる「貧困喰い」ビジネス。

 日雇い派遣の雄、グッドウィルグループ(現:ラディアホールディングス)でさえ交通費は出してやっていたが、エスプールでは交通費が支給されない。「時給800円」は偽装派遣会社のアルバイト?派遣社員の時給の平均となっている。エスプールも軽作業請負会社としては一般的な「時給800円」だそう。

 時給800円で、どうやってフリーターやニートが出来るビジネスマンに変身できるのか知らないが、エスプールの場合、これに交通費は自腹、所得税は天引きとマイナスが続き、最後にエスプールクラブ共済会費用250円というのを搾取される。あれこれ引いて実質時給は600円台。

エスプールクラブ共済会費用250円

 エスプールクラブ共済会・共済金≠フ目的は(日雇い労働者には無関係なはずの)福利厚生サービスを提供し、エスプール共済会員の労働者に『快適さ』に資すると共に、労働者の事故時の『傷害保険』や、労働者が派遣先に損害を与えた時の『損害賠償の補償』のためだそう。

 労働者が派遣先の備品を壊したら、派遣元であるエスプールが弁償すべきで、労働者個人になぜ責任が行くのか理解不能だが、これらの労働者のための傷害保険や損害賠償のための保険としての積み立て共済金がエスプールクラブ共済会・共済金≠ネのだそうだ。

 そして、更によく分らないのが、エスプールクラブ共済会掛け金≠ヘ、『無事故奨励金』として戻ってくるからいいのだという(が、実質、戻ってはこない)。

 時給800円の日々の労働から毎日しょっぴかれる250円のエスプールクラブ共済金は、40日間無遅刻無欠勤をすれば返ってくるのだそうだ。「3,000円」だけだが。

 250円×40日=10,000円。返ってくると言うのなら、10,000円丸ごと返すべきでは?あとの7,000円はどこ行ったの?と思うだろうが、この共済は『傷害保険や損害賠償のための保険』でもあるから、丸々返したら『共済』の意味がなくなってしまうから、ここはあえて反論しない事とする。

 しかし、この40日間無遅刻無欠勤の40日ってのは、労働者側のスケジュールに従った40日ではなく、あくまで人材派遣会社エスプール都合による指定の40日間を無遅刻無欠席で過ごさなければならないそう。

 この非道もあえてスルーする。

 しかし、このエスプールの労働者に対する雇用体系は(本紙追及のアンツグループやJASDAQ上場擬装請負企業SBSホールディングスグループも同様だが)、明らかに社会保険・雇用保険・労災保険加入義務のある社員的雇用スケジューリングである。

エスプールの雇用形態には社会保険支払い義務

 エスプールにも色んな言い訳はあるだろうが、この社会保険未加入そして過去の社会保険料未払いについては、看過し見過ごしたまま終れる問題ではない。

 そもそもエスプールクラブ共済会費用250円を労働者の給料からしょっぴく際の、説明というかエスプールの言い分には、労働者の快適さと万が一の保険って事を謳っている訳だから、これ、保険について余り考えた事もない日雇い労働者にとっては「?これは、いわゆる『社会保険』とかいうアレかな?」と考えてしまう人間も多いだろう。

 本紙追及のアンツグループへの労働者の怒りも、
労働者としては、
「当然、怪我したら雇用主たるDM業者のアテナか、派遣元のアンツが面倒見てくれる」
と思っていたのに、実際に怪我をして救いを求めたら、助けてくれるどころか脅迫を受けた・・・なんていうシャレにならない労使の行き違いからきている。

 エスプールの場合も今はいいだろうが、もし隠し通せないような労災事故が起きたり、余りに悪辣な搾取に労働基準監督署が動き出したりして社会保険の未払いを突っ込まれたりしたらどうするつもりなのであろうか?

 アンツグループだったらまだ吹けば飛ぶような未上場企業であり、営業停止になっても社長の長尾君達がちょっとフトコロが寂しくなるだけですむ。しかし、ヘラクレス上場のエスプールやJASDAQ上場のSBSスタッフの場合、社会的影響、特に投資家や同業他社に与える影響は計り知れない。

 製造業に続いて、日本中の物流運輸系人材派遣会社の擬装請負に関する安っぽいメッキはもうほとんど剥がれかけている。いずれ、物流関係の擬装請負にかかわる点で、エスプール(SBSスタッフもだが)は「社会保険料未納問題」を追求される事になる。いったん、株式を公開して投資家・株主に対する責任が生じているのだから、先に生じるはずのリスクに関しては経営陣は責任持ってマネージメントしなければならない。

 社会保険料未納に関しては、派遣切り問題も飽き飽きされたメディア報道が、
「社会保険料未納の人材派遣会社から社会保険料を強制取立てすれば何兆円か浮くじゃん!?」
と言って社会保険料問題をクローズアップし、未納人材派遣企業を悪徳企業視しはじめるだろう。

 それまでにアンツにしてもSBSスタッフやエスプールにしても莫大な額に上る社会保険料の未納を支払い、追及をかわすことができるのだろうか?

 また、エスプールに関してはこのエスプールクラブ共済会費用250円≠ノついて、40日間働いて10,000円積み立てさせておいて、無事故奨励金≠ニして3,000円しか返済せず7,000円は保険共済に使うという言い分なのだか知らない。

 しかし労働基準法24条では労働者の賃金について、税金を除き労働者に全額を支払わなくてはならないと定めている。エスプールの無事故奨励金積立・エスプールクラブ共済会費用250円が障害保険にイチイチちゃんと入っているのなら、言い訳として通用するだろうが、もし単なる積み立てで会社にプールしてあるだけで保険加入も何もしてないようなら明らかに労働基準法違反の違法行為といえるであろう。

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