ニチロ(現マルハニチロHD)架空豚肉詐欺事件の背景『裏ポーク商人』飯島健二(飯島商店=茨城)の錬金術(9)

2012/01/27

「見解の相違はあるが、修正申告に応じた」。脱税を犯した企業等の常套句である。

 見解の相違がちょくちょく発生するほど、法人税法が目まぐるしく改正し複雑化している訳ではない。脱税行為者の大半が確信的に脱税に及んでいることは間違いない。意図して脱税した自覚があるからこそ、争うことなく修正申告に素直に従うに過ぎないのだ。

 見解の相違を口にするのは、悪質性がないことを対外的に強調したいが為の言い訳でしかない。尤も、ことのほか罪が重い脱税(巨額脱税は即実刑、前科があれば原則実刑=懲役と罰金の併科)だからこそ、修正申告後の追徴課税には最低でも応じざるを得ないのだ。しかし、何一つとして言い逃れが出来ない脱税がある。

 差額関税制度をすり抜けた脱税である。国内産豚肉の価格安定を守るため、国内基準価格に満たない安価な輸入豚に同額までの関税を課すのが差額関税制度である。脱税の手口は、輸入申告時にインボイス(仕入れ書)を偽造し、実際価格より基準価格水準に近い高価格で申告し、課税を免れるというのが代表的だ。

 また、実体のない複数業者間で納品を繰り返すことで、その度に手数料を抜き、且つ摘発の網から逃れるなどもする。この手の脱税は、明らかに犯意あっての脱税であり行為者は例外なく逮捕起訴されることとなる。驚くべきことは、脱税を犯す者が不届きなブローカー業者に留まらず大手食肉卸業者や有名食肉メーカー、総合商社に至るまでが犯罪に手を染めている実態である。

 近年でも、協畜(愛媛=脱税額120億円)やフジチク(名古屋=同62億円)といった専門業者に加え、日本ハムや伊藤ハムといった有名企業、日本を代表する総合商社の一つ三菱商事(追徴課税処分に留まり刑事告発は無し)などが、関税法違反で摘発されている。輸入豚肉業界は、関税逃れが半ば常態化した犯罪集団となっているのだ。

 ただ最近になって、脱税の温床となっている差額関税制度の見直し気運が高まってきている。輸出入関税の完全撤廃を掲げるTPPへの参加方針が固まりつつある現政府には、参加への後押しとして差額関税制度が如何に悪法であるかを広めようとする思惑があるらしい。

 一番手っ取り早い方法が、関税絡みの巨額脱税事案を摘発することだ。所詮は脱税の巣窟となっている輸入豚肉業界である。本腰を入れて摘発に臨めば、過去の事案に匹敵する大物が引っ掛かる筈だ。TPP参加への生贄となる者は果たして誰なのか。

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