2012/02/09
2月7日、日米両政府が日本のTPP交渉参加への事前協議を開始した。日本政府は全ての品目を交渉対象にする方針を表明し、関税交渉については例外なく検討するとした基本方針を示した模様だ。
TPP参加に際しての最大の交渉相手である米国に対し、全品目が交渉対象であることを日本政府が率先して表明したことから、野田佳彦首相の消費税導入での不退転の決意とやらが、TPP参加に於いても同様であることが窺え知れた。
前回記事(1月27日付け)で報じたが、輸出入関税の完全撤廃を掲げるTPP参加に、国民の理解を高める手段として、関税のなかでも取り分けて評判の悪い差額関税制度を槍玉にあげる筈だと記した。その通り、TPP参加への生贄が早くも生み出された。
TPP交渉参加への事前協議が開かれた翌日、待ってましたとばかりに豚肉輸入業者「インターテック」(足立区=金子淳史代表取締役)が、東京国税局の税務調査を受け約14億円の所得隠しを指摘されていたことが判明した。
追徴課税は、申告時に隠蔽や仮装といった作為的なものに課せられる重加算税を含め約4億円になった模様だ。今後、東京国税局が検察に告発し逮捕に進むと考えられる。一般的に10億円を超える所得隠しは、滅多に御目にかかれない大事件である。
しかし、こと差額関税制度を悪用した脱税に於いては、10億円程度では小額のちっぽけな事件でしかない。豚肉輸入で脱税に手を染めている業者からすれば、一桁上の100億円を超えて漸く大事件といった認識であろう。それ程、輸入豚肉業界では一介のブローカーから大手にまで差額関税制度の悪用が蔓延し、罪の意識もなく日常化している証左ともいえる。
そういった意味からも、今回のインターテックの所得隠しの指摘は、TPP参加を加速するが為の単なる取っ掛かりに過ぎないと考えるのが妥当だ。輸入豚肉業界に於いては瑣末な脱税事件でしかない本件を足懸りに、より巨額な脱税事件の摘発に着手している筈だ。
既に20社を超える対象企業の内偵が済んでいるという話も浮上している。一般的な関税とは制度も異なる差額関税制度の不備を強調し、関税イコール悪といった図式を世間に浸透させようとする、野田政権らしい姑息な手段だが、その効果は絶大であろう。
どうあれ、戦々恐々の輸入豚肉業界は今、次の生贄が誰になるかと浮き足立っている模様だ。また、安価な輸入豚肉の参入を拒んできた同和系業者の反撃にも注目だ。