ドロップシッピング詐欺

2009/06/16

ドロップシッピング商法とインフルエンザマスク

 インフルエンザ対策で風邪予防マスクから工場用の防塵マスクまでが「インフルエンザ予防マスク」として、不当に高額な値段で取引され、ネット上でマスク不足とマスク価格の暴騰が起ったニュースから1ヶ月。マスクのネット売買が混乱したのは楽天が楽天モールの加盟店に「このインフルエンザ景気にマスクを売りまくって儲けましょう!」とマスク販売を唆したのが主要な原因だと思っていた。

 しかし知人から聞いたところによると、楽天のやった行為など単なる販売店騙しで大したことないそうだ。インフルエンザ騒動でマスクの高騰を煽って、そこら中に大迷惑を撒き散らしたのは「ドロップシッピング」というネット商売の胴元だという。

 ドロップシッピングというのは「在庫は『一切なし』でインターネットショップを開業できマスクから車まで『物販−商品販売』ができる」システムのことである。

 (マスクを例にとってドロップシッピングの流れを説明する)
 なんで在庫なしで商品販売ができるかというと、ネット上に作った自分のショップHPに、現時点では他人(卸売業者)に所有権のあるマスクを自分が「仕入れたつもり」で掲載する。

 マスク10枚セットを卸売業者から100円で仕入れ、先月のようにマスク不足の際になら5,000円で売ってもかまわない。もちろん、「仕入れたつもり」でHPには「マスク10枚セット5,000円−即日発送」等と書いておく。

 ちょっと変なのは(利便性の為でこれが『在庫ゼロ』の要因なのだそうだが)、HPで購入者からマスクの注文を取るのは自分だが、商品は一度も自分の目の前を通らずに卸売業者からダイレクトに購入者へ郵送されるところである。

 こうなると、自分のHPに他社の広告を張って、クリックされたら広告代金がもらえる「アフィリエイト」と同じじゃないの?と思われる人がほとんどだろう。自分のHP上で使った事もない商品の美辞麗句を並べて、HPを見ている人に購入動機をおこさせて「お小遣い」稼ぎをするという点では同じである。

 ドロップシッピングアフィリエイトとの一番の違いは、商品の販売責任である。広告代理業務であるアフィリエイトには販売責任はないが、物販代理業務であるドロップシッピングには販売者の責任というものが生ずる。ドロップシッピングは一応は、一度は仕入れたつもりで商品紹介するから、商品の値段は買ってに自分で決めていいというのは上記したとおりだ。

ドロップシッピングプロバイダがマスク高騰の原因

 一度も仕入れちゃいないものを仕入れたつもりで値段をつける。ドロップシッピングをやろうという人はお小遣い稼ぎ」気分の人が多く、実際に商売やったことのない人ばかりで相場感覚が分らない。よって、自分にこのネットショップ……的な?ホームページスペースを与えてくれたドロップシッピングシステム提供者=ドロップシッピングプロバイダの意見を聞かざるをえなくなる。

 今回のインフルエンザ便乗マスク価格高騰事件で、楽天では楽天社員がモール加盟店に「マスクを高額で売りまくりましょう」等というあおり行為を行ったが、あまりに馬鹿げた価格と儲け構想だったため賠償問題になる前に2ちゃんねるなどで即座に批判を浴び注目され大事に至らなかった。

 しかし、ドロップシッピングプロバイダと販売代理を行うショップ、そしてエンドユーザー間では、すべてドロップシッピングプロバイダの不法行為責任により、大きなトラブルが巻き起こっていた。詐欺と呼べない浅ましくみみっちい事をやっていたわけだ。

 インフル騒動で、現実の薬局店頭などでもマスク不足が起った際、ドロップシッピングプロバイダの多くが、販売代理店に対して「マスク価格を吊り上げて儲けましょう稼げます!」等という扇動的な言葉と共に、ありもしない「マスクの大量在庫&即日発送可能」のお知らせメールをいっせいに送った。

 薬局店頭にさえ在庫のないマスクを大量に抱えているなんて凄い!…って事で販売代理店のショップ達はHPに「マスク即日発送可」という文言と、定価以上のマスク価格を表示し、大量の購入者から注文を取り次いだ。

 本当は、即日出荷できないどころか、仕入れるめどさえたっていない「架空のマスク」の注文をである。

 注文のマスクはすべて、商品が現状で無く即日出荷できないモノだが、加熱するインフル報道の中で「即日出荷翌日納品」表示をうたっているからボンボン注文だけは入るわけだ。そして、このドロップシッピングの悲しい話。

 ショップ側には販売責任があるのに、購入者に直接マスクを発送するのはプロバイダ側だから、大量に注文を取り次いだマスクを、プロバイダがちゃんと購入者に発送しているか?どうかは、購入者から「商品が届かないぞ、この詐欺師!」とメールで罵声を浴びせられるまで分らなかった。

入荷予定未定品もドロップシッピングでは「商品」

 ここまで書くと、「おお、販売代理店を介在させてややこしくさせた取り込み詐欺の新手か」と思われる人もいるだろうが、そうではない。ドロップシッピングプロバイダの半分は、詐欺など考えずに、本当にドロップシッピングの胴元として、楽天やYahoo!のようにビッグな会社になってやろうと野心を抱く若者達だ。

 しかし、夢は大きいが、やり方がセコイ。大量の自営業者予備軍の個人を「在庫ゼロで儲かる!稼げる!」と盛り上げて、販売代理店を作れるだけ作りまくる。するとドロップシッピングプロバイダをやる方には大量な販売窓口ができることになる。

 もちろん、ほとんどのプロバイダ運営者に「ネットで見つける以外の『懇意な』物販の仕入れルート」などあるはずがない。もともとIT商売畑の人達がなんか商売できないかなー?と考えて、とりあえず販売窓口だけ作っちゃえって始めたのがドロップシッピングの起こりなんだから。

 で、マスクの話に戻れば、仕入れられる予定もないマスクをとりあえず100年分位の注文を受けれるだけ受けてしまうのだ、後先考えず。さて、何とかしようと。悪意の程は分らないがいい加減な商売だ。
ドロップシッピングビジネス起業を煽って、法外な加盟金専用サーバ購入代メンテナンス代金を詐取する『本格詐欺型ドロップシッピングコンサルタントもあるが、その話はまた後日)

 これで困るのは販売代理店のショップ達。即日配送していたはずのマスクがほとんど客に届いておらず詐欺師呼ばわりされる。特にカード決済で注文してマスクが入荷未定なんてんじゃインフルエンザ流行の今こそ必要なわけで詐欺より低俗な嫌がらせに近い。

 筆者本人も、今までネットショッピングやオークションでカード決済をして、「商品が入荷予定未定です」なんていう、ガキの遊び以下のいい加減な話は効いた事がない。

 ブックオフや紀伊国屋さん、アマゾンなどのネットショップでも、発送状況は一目瞭然でわかるようにサービスされているし、楽天のようなショッピングモールでのネットショッピングでも(三木谷は嫌いでも楽天ショッピングは大好きでよく利用するが)、加盟店さんはマメに発送状況を知らせてくれる。

 楽天ショッピング感覚でドロップシッピング加盟ショップから商品を購入予約し、カード決済されてしまい、あとから「いやまだ仕入れのめどが……ワタシ実は…ドロップシッピング加盟店でして、本部がマスクをまだ仕入れられないようで…」などと言われても、何のことやらわからない。お前、詐欺師か?訴えてやる!となるのは必然である。

ドロップシッピングは「無責任」が真髄

 入荷予定日だけでもとプロバイダに尋ねれば、「在庫は多少あったのだけど、予想を上回る受注数で即日出荷できる在庫分がゼロになった。報道の影響で大手マスクメーカーでも、生産ラインがショートして1ヶ月以上の納期遅延があるそうで国内では生産納期が見えないので、今、海外への発注ルートを探しています」なんていう風に、いきなり天変地異が襲い、それでも自分達はお客さんやショップさんの為に頑張っています…みたいな事をいうそうだ。

 実際は、国内在庫が枯渇したから海外ルートを探しているのではない。

大量にできた販売窓口で思う以上にマスクの注文が取れたから、じゃ、マスク注文してみよう。でも、どうせなら中国製品の方が安く仕入れられるだろうから、それを探そう。客への謝罪は販売代理店に責任があるのだから幾らでも待たせておけ

 こんなノリで、平気でクチサキ商売をして、自分が儲かることを平気で優先できる人、というのが、今、新興のネットビジネス業界では増えている。図々しいだけで詐欺じゃない。しかも怒鳴り散らすとシュンとなるようなマジメな奴が経営者であることが非常に多い。

 しかし販売代理店としては、ドロップシッピングプロバイダ側にもっともらしい言い訳をされても購入者からの督促があるから気が気ではない。そもそも、在庫がないなら明日以降の「即日出荷可能」表示は紛らわしいから削除すべきだと言っても、プロバイダ側は「サーバが混雑しシステムがダウンしているから即日出荷可能の表示を取り消せません」「近日中に入荷するのは間違いないんです、頑張って下さい」等となだめられ「妙な説得」をされて、プロバイダ側に何の面倒も責任も取ってもらえないことになる。

 こうなると、売れ筋商品としてマスク販売を推奨してくるプロバイダからのメールや、プロバイダサイトの売れ筋ランキング価格表も神経を逆撫でする要因となってくる訳で、血圧に影響して真に健康に悪い。多くのドロップシッピングプロバイダのサイトでは、未だに発送(…いや、仕入れさえ?)されていない「インフルエンザ予防マスク」が売れ筋推奨商品として並んでいるそうだ。

 ドロップシッピングプロバイダとは、かように、詐欺ではない」が、他人をもちあげて他人に喧嘩させて、儲けのところだけは自分が先に手を出すタイプの嫌ーな性格の人達のビジネスである。販売代理店加盟金詐欺のプロバイダは別にして、普通のドロップシッピングプロバイダは性格が曲がっているだけで詐欺師ではない

 よって、今の段階で先月のインフルエンザ・マスク騒動でマスクの大量受注をし、購入者にギャーギャー騒がれている人達も、いつかプロバイダ側がちゃんとしたマスクを仕入れて購入者に発送することを信じて待っていればいい。しかし、今回の「即日発送マスク実は入荷予定なし事件」で、多くの販売代理店の人達はドロップシッピング業者のいい加減さを目の当たりにして、付き合う相手じゃないという真理を得たはず。いやーな気持ちが勉強代だと思って早いとこドロップシッピング商売から足抜けするべきだ。

シッピングプロバイダ自体こそ在庫ゼロのボロ儲けビジネス

 ここまで読んで大体の方は「でもドロップシッピング会社は、最低限マスクを仕入れとくとかのリスクを張って商売やっているんじゃないの?」と思われたはず。

 それがまた違うのだ。プロバイダが集める販売代理店在庫ゼロなわけだが、実はドロップシッピングプロバイダ自体も在庫ゼロの気楽な商売なのである。

 プロバイダが行っているのは、各ジャンルの卸売り業者やら問屋からの商品データを管理してドロップシッピング販売加盟店に情報提供しているに過ぎない。売り先も他人の褌に頼り、仕入れも他人の軒先を借りて商売しているだけの「クチ入れ屋」なのである。

 しかし販売加盟店だか代理店契約をする時にも、お手軽なネット上の契約であり、ドロップシッピングと言う商売が、次世代ネットマーケティングの雄か?単なる「クチ入れ屋」か?なんてトラブってみるまで実態わからずである。結果、販売代理店の多くが、プロバイダ側が気まぐれに作った商品構成に、騙さ…いや、乗せられて、誇大広告の実行犯になって、手間ひまかけたのに1円も儲からずに疲れて終ったなんて話ばかりあふれ、儲かったという話は皆無だ。

 これ、未入荷商品先物売りの犯人でトラブルの元凶であるドロップシッピングプロバイダ業者側に悪気がない分、怒りの矛先がないだろうから、ちょっとネットでお小遣い稼ぎなんて思っている人はやめた方がいい。ネットでちょっとお小遣い稼げると思う時点でネット商売の客としてのスタンスしかないことを分って。

 そういう(自分が永遠のお客様だと言う)現実が分らない人向けに、用意されている「詐欺ドロップシッピング」商法については、後日また報じることとする。

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