旧ソ連軍によるアフガン侵攻時、戦地でアフガン兵に空手を教える田中光四郎氏の勇姿。この時田中氏はアフガンゲリラ兵として、武器を手に旧ソ連軍と戦った。

 日本の武士道精神は、やはり生きていた。
 アメリカの空爆直前に、友人の反対を押し切ってアフガニスタンに飛んだ男がいた。田中光四郎氏、61歳。氏は旧ソ連軍のアフガン侵攻時、ソ連の不条理に義憤を感じ1人アフガンゲリラとして旧ソ連軍と戦った日本人戦士である。
 現在は国際難民救済委員会事務局長、日本自由アフガニスタン協会専務理事などを兼任し難民救済活動に尽力しておられるが、本業は不二流体術第二代宗家の武道家である。
 氏は、そもそもアフガンムジャヒディン(戦士)に武道を教えるためにアフガンに渡ったのだが、今回タリバンの刺客に倒れた故マスード司令官とも親友の間柄で、アフガン内部の争いに心を痛めてきたという。

 確かにテロは、時として無差別殺人にも直結するわけだから、法治国家にしてみれば許しがたい犯罪である。
 しかし何故テロは起こるのか…何故あれほどの弱者が大国アメリカに挑もうとするのか…アメリカが決めた事ならば報復という名の殺人は許されるのか…等々誰も正しい答えを導き出せない疑問が次々と浮かんでくる。
 いつの時代も、何処の世界でも、歴史は勝者によって作られてきた。敗者(弱者)は常に賊軍なのだ。ただ、先進国と言われる国々は世界中の2割弱でしかない。その2割弱の国々が中心となって世界を支配しているのである。
 豊かな国の人も、貧しい国の人も、それぞれに信じる宗教があるだろうし、同じように祖国を愛し誇りを持っている。家族も守りたいだろう。少しでも幸せになりたいだろう。そんな気持ちは世界中の誰もが国境を問わず持っている『心』である。

 日本人は宗教に関して寛大なのか疎いのかわからぬが、多神教のため、他宗教をあまり批判したりはしない。それはそれで、忘れっぽく飽きっぽい日本人気質に良く合っていて素晴らしい(中には創価学会みたいに他宗教を認めない宗教もあるが)。
 逆に1番熱心なのがイスラム教信者のような気がする。1日に何度も祈りを捧げ、断食月があったり、仕事よりも家族よりも大切なものという感じで、我々日本人には到底理解が出来ない。そこまで夢中にさせる宗教だからこそ、それを否定されたら許せないのだろう。
 アメリカを始めとする先進国といわれる西洋人の多くは、この世の人生のみを唯一の人生と考える現世的な世界観を持っている。
 それに比べてタリバンは聖戦で死ねば残された家族は幸せになるし、自分も天国へ行けると固く信じているのだ。軍事的な力は圧倒的にアメリカが強いが、死を恐れない人々の力をあなどると、たとえアメリカだろうと一生の不覚の傷を負う事になる。

 
 “文明の衝突”
大地社の水谷浩樹代表。写真は湾岸戦争時イラクで撮影したもの。

 それにしても宗教には理解できない事が多々ある。
例えばアイルランドでは同じキリスト教徒同士が殺し合いをしているし、規模は違うが国内でも創価学会と大石寺の醜い争いなどがある。人類の祖はアダムとイヴと教える宗教もあるし進化論では人間の祖先はサルという事になっている。元々安らぎと平和を求めて始まった筈の宗教が、どうして争いの火種になるのだろうか。
 結局、当紙社主が常々言っているように、神様が作ったといわれる『教義』も使用するのは時の指導者といわれる人間だから、我々凡人よりは煩悩も少ないだろうが、間違いもある。
 時として神に近付いたような心境になる事があるかもしれないが、人間はどんなに理想を求めても、修行をしても、学んでも、金を積んでも、神には成り得ないのだ。

 とイスラム教に一定の理解は示したものの、無差別テロを許すわけにはいかない。そもそもイスラム教とテロを同一視してはいけない。イスラム教徒の大半はテロとは無関係で、他人に迷惑をかけずに生きているのだ。
 当紙が常に言うように、いつの時代にも、どの世界にも一握りの悪党はいるのだ。宗教界にも法曹界にも教育界にも経済界にも…。全ての業界に、全ての人種に、全ての宗教に、全ての国家に、完全無欠はあり得ない。
 何故なら神様には程遠い百八つの煩悩を持った罪深き人間の集団が、国家や宗教を形成しているからである。それでもその国の文化や伝統、宗教といったものが長い年月の中で歴史をつくり、国民性や延いては肉体骨格までをも作り上げていくのである。
 例えば筆者は、最近スポーツジムで危機管理の訓練も兼ねてトレーニングをおこなっているが、何を勘違いしたのかラテンエアロダンスやストリートダンス教室にまで参加している。
 片やブラジルの腰振り踊り、片やアメリカの黒人の手・足・腰・肘・膝をバラバラに動かす踊り。どちらも、とてもじゃないが身体が動かない。無理して踊ったら腰や膝を痛めてしまった。こういう踊りは(基本的には)日本人の骨格や筋肉には向いていないのである。日本人にはやっぱり盆踊りが一番似合うのだ。

 それにつけても日本の政治家のレベルの低さは今に始まった事ではないが、世界中がテロに立ち向かおうと統一歩調を進めている時に、気合が入っているのは小泉総理だけで、社民党や共産党の発言などは論外であるが与党内にも足を引っ張る者もいるのだから始末が悪い。
 だいたいこの期に及んで構造改革に反対する族議員がまだまだいるし、ついこないだの選挙で「私は小泉首相の構造改革に協力します」と言って当選したのは何処の誰だ。
世間が不景気で苦しんでいるのに「中選挙区に戻したらどうか」とかバカみたいな議論をしている政治家のカスどもめ。世間が不景気でも文句を言わずに我慢しているのは、一部の官僚や権力者達が裏金を作ったり、自分達だけに利権が集中する構造をぶち壊す事、即ち“聖域なき構造改革”を期待しているからだ。

 
 再びアフガンへ

 筆者はアフガンから帰国直後の田中氏に会った。空爆が始まり命からがら帰国してきたのかと思いきや、再度アフガンへ向かうというのである。今自分達にできる事は何なのか自問自答しながら、現地で武道の演武を披露したという。
 氏は、取材中も現地の難民の話になるとつらい想いがこみ上げてくるらしく、時に涙が溢れ出てくるのである。

 しかし次回は強力な助っ人が加わる。氏の友人で拓殖大学学友会副会長の谷口東太氏である。武道一筋の田中氏では難民募金活動は大変と、人脈の広さで支援を買って出たのである。
 『1番が1番』の消費者金融=武富士も、得体の知れない難民救済団体に高額寄付するのもいいけれど、こういう実直で真剣な活動をしている団体への寄付をお願いしたいものだ。
 次回、田中光四郎氏に同行するのは、若手民族派団体の活動家としてメキメキ力をつけてきた大地社水谷浩樹代表と隊員の大島義人君である。水谷代表は妻子を説得しての行動だ。当紙社主の大学の後輩であるが、社主に尋ねると「若いけど人望がある。行動力もあるし上の人の話しも下の人の話も良く聞ける男。将来、民族派のリーダーの1人になる」と評価は高い。
 そりゃそうだろう。こういう時期に、しかも妻子のある身で、おいそれと戦地に赴けるものではない。それも自費で難民の役に立ちたいという義侠心だけで、である。

 どうか読者の皆さん、彼らの誠意と勇気ある行動に御協力をお願いします。不景気でそれどころではないという気持ちは分かりますが、まだこの日本では食うに困るところまでは行っておりません。僅かな志と義で結構です。田中光四郎氏一行にご協力を!筆者も彼らの爪の垢を煎じて飲んだ心境で、ささやかながら応援させてもらっています。
 第2回目は11月12日に日本を発つということですから、本紙が発行される頃には、一行はアフガンの地でさぞかし難民に喜ばれる活動を展開していることでしょう。
田中光四郎氏一行の無事と成功を、心からお祈り申し上げます。

 
トップページ写真集一覧
©2005 敬天新聞社
info@keiten.net