社主の独り言(中辛)

(敬天新聞6月号)

▼先日、関東島原半島会で三菱重工業相談役、相川賢太郎氏とお会いした。相川さんは長崎県人会の会長でもある。
 相川さんの御両親が西有家と北有馬という御縁らしい。現在八十二歳とか言われていた。
 御挨拶したら矍鑠(かくしゃく)として確たる素晴しい意見をお持ちである。
 二十年前のバリバリの社長、会長であったら、自社の発展、防衛が中心で本音を我々に語ってくれるかどうかは分らない。その前にお会いも出来ないだろうが。

 年配の方々は還暦の我々を見ても、「若くていいねー」と言われる。
 もう定年になり、年金生活が始まり、老後が、身体がと言い始めた年齢を迎える年になっても「若くていいねー」と言ってくれる年代がある。
 つくづく世の中、年代、歴史は繋がっているんだなー、と認識した。雲仙普賢岳が爆発した時、全国から二百三十億の義捐金を頂いたそうである。
 その恩返しを今こそすべきだ、と熱弁を振るっていた方もいた。

 この方も八十歳位で自信を持った言い回しから推測して大物風だった。田代さんという方だった。
 元衆議院で弁護士の松永光先生も挨拶された。もう七十七、八歳ではなかろうか。元気だった。
 久間章生先生が六十九歳で一番若かった。かくも年配者の方々は元気なのである。
 やはり島原半島の人達は今回の東北大震災を雲仙普賢岳にダブらせて思いを馳せる人が多いようだ。
 私も若気の至りで久間先生と喧嘩したのは、雲仙普賢岳への義憤だった。

 だが先生も我々に見えない所で被災者への補償でウルトラCを使い、奮闘されたとのことだった。
 国会議員は国家の利益を議論する立場で地方への利益誘導をお願いする人ではない筈なのに、現実には地方に金を引っ張ってくる人、仕事を取ってくる人、道路や橋を作る人が偉い人で、地元に人気がある。

 恐らくこれは世界中共通することではないか。
 そういう意味では長崎空港から一番不便な地元島原南部に久間道路と尊称されるような道路を作らなかったことは、久間先生にとって一生の不覚であった。
 普通の人が言ったら別に何の意味も持たない、寧ろ普通に使われる「しょうがなかった」発言も、切り取って殊更に強調されれば、命取りにもなるのだから、本来の人の良さが、脇の甘さにならないよう気をつけて頂きたい。
 政治家の役者不足から再登板も充分あろう。

 それにしても東北大震災は色々な価値観や物の見方を変えるようになった。私は子供がキャーキャー騒ぐのが嫌いで、特に言うことを聴かないで走り回る子を見ると注意したくなる程だった。

 しかし被災地の方々が口々に子供達の元気な姿を見るだけで勇気が貰える、とか希望が涌いてくる、という言葉にハッとさせられた。子供は国の宝という言葉が、遅まきながらやっと理解出来るようになった。

 甲子園に出場する選手を見て、自分が子供の頃は、逞しいお兄ちゃんに見えたし、いつしか同年代に見え、そのうち後輩に見えて来る。やがて息子のような存在になり、今では孫の歳である。

 現役トップの人達がもう同年代に迫っている。
 馬齢ではあっても、歳が上というだけでプライドがあったりするもので、それが功を奏したり、禍になったりと色々あるが、年配者はやはり頼りになる。
 歴史が繰り返す以上、先人の知恵、先輩の存在、経験、助言はまた国の宝なのである。

▼夫婦というのが何なのか分らない。一緒になる時は好きだから一生別れません、と言いながら時が経てば、その時の気持ちが失せて別れる人もいる。
 一緒になる前、顔も見たこともない、性格も分らないまま、親に帰ってくるなと言われて一生一緒にいる人もいる。
 夫婦なのに全く愛のない人もいる。完全に夫婦関係が壊れている人、寧ろ恨みあってるような夫婦もいる。
 夫婦ではないのに仲のいい人もいる。相性のいい人もいる。

 私は芸能界の中で一番好きな夫婦の形が三谷幸喜と小林聡美夫婦だった。
 三谷幸喜のウィットに富んだ言動と飄々とした風貌に対して、主役までは行かない八割程度の美貌に、頓知の良さと明るさを持った小林聡美の組み合わせは日本人が理想とする程々のリッチさと小さな幸せの塊に見えて、憧れの夫婦像に見えたのだが…。
 まさか別れるとはねー。他人事ながらショックだった。

 やはり傍から見るのと現実とは違うんだねー。
 一緒になる時は誰でも相手に対して、愛があると思うのだが、その愛は尊敬であり、感謝であり、思いやりであり、母性であったりであろう。
 そのまま、「かけがえのない人」まで辿り着けば、終の番いになるのだが、長年の生活の中で、お互いに甘え、我が侭、勘違い、のような言動が「地」として出るようになって、愛が情だけ、縁だけ、のような感覚に変っていくのである。

 昔の理想の夫婦像は、奥さんが一歩下がってついてくる、男の仕事に口出ししない、女は家庭のことだけすればよい、だった。
 今の若い女性からすれば、とても耐えられない侮辱であろう。時代がそういう夫婦関係を作ったのである。

 今は自由な時代だから、くっつくのも離れるのも自由である。若い人も年配者も我慢をしない。
 離婚も再婚も昔ほど意味を持たなくなった。これから世の中がどういう風に変わるか分らない。
 夫婦の形も流行や時代に増々翻弄されて行くことだろう。やがて家族さえもなくなるのだろうか。
 いや、その心配はないだろう。
 不平不満はあるものの大多数が夫婦番い(つがい)という形を取っており、世に男と女がいる限り、色んな形はあるにせよ、夫婦の絆は強いのである。
 以外と夫婦の仲って、お互いに踏み込みすぎないことが、長持ちの秘訣かもね。

▼今月号では警察組織の不祥事を暴いた。私の基本姿勢からいえば、国の治安防衛を担う警察組織であるとか、自衛隊組織であるとかは、支援はしても批判は出来るだけ避けたいというのが、心情である。
 だが、今回の警察官の行為は許せなかった。警察官としての正義を忘れ、自分の欲得を要求し、しかも全警察OBを侮辱した。
 被疑者を屈服させる為に、自分達が知り得た秘密情報をマスコミにリークし、被疑者をより不利な状況に追い込んだ揚句、飲み食いを接待させ、仲間の就職を強要したのである。

 たまたま今回表面化したが、この警察官の場合、過去にも似た様なことをしてたのではないか。
 正規に採用されたOB警察官まで辞めさせようとする言動は驕り昂ぶり以外の何物でもない。
 余程、警察官の持つ魔力に酔い痴れていたのだろう。
 この記事を書いてる時点では、まだ組織防衛本能からか、警視庁はこの事実を発表していない。

 内部的にはもう処理しているかもしれない。監督不行届きを恐れているのだろうか。
 それは違う。今回の問題は本人の資質の問題であることが大きい。どの業界にも一握りの悪党はいる。
 何十年、何百年にも亘り、一切の不祥事も無いという組織などある訳がない。
 欲得、野心の塊である人間の集まりが組織である以上、それを全て押えることは不可能なのである。

 北朝鮮や中国なら、粛清といって殺害するだろう。日本の法治国家では、それはできない。
 だからこそ行き過ぎた慣習や犯意のある行為は一罰百戒として発表すべきである。
 一時的に国民から批判されたり、捜査力に影響したりはあるかもしれない。しかし長い目では必ずこの暴露は功を奏するだろう。
 多くの真面目な警察官の信用を裏切った罪は重い。
 警察官であれ、一般人であれ、不正や犯罪には毅然と戦う姿勢、取締る姿勢を見せてこそ、国民は拍手喝采し信頼することだろう。

 間違いを正すことを恥じることはないのだ。

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