任天堂DSソフト「右脳を鍛える」シリーズで知られる新日本速読研究会会長・川村明宏博士!?の脳トレ商法

(敬天新聞3月 162号)


川村明宏「博士」

脳トレゲームは錯覚?

 2月5日ハーバード大学の科学者クリストファー・チャブリスとダニエル・シモンズが著した「錯覚の科学」という本が出版された(文藝春秋)。
 その中で「脳を鍛える大人の計算ドリル」と「脳を鍛える大人の音読ドリル」シリーズを出版し一躍有名となり、タッチペンを使って楽しく脳の活性化や脳年齢の測定ができる任天堂ゲーム機DS用ソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」というゲームでは、爆発的ヒットとなって「脳トレ」ブームを巻き起こした川島隆太氏の「脳トレゲーム」を、科学的根拠に基づき「効果なし」と否定した記述が話題となっている。
 川島隆太氏は、放射線医学の研究者で北里大学教授の父を持ち、東北大学大学院医学研究科を修了している医学博士である。
 専門分野はヒトの脳活動の仕組みの解明、研究と応用。認知症患者の脳機能の回復、高齢者の認知症の予防または脳機能の改善、幼少児の脳機能の発達促進を目的に研究に取り組んでいる。その研究を基にした学習方法は日本珠算連盟や公文教育研究会といったところでも取り入れられている。それ故にハーバード大学の科学者や世界で最も権威があるという学術雑誌「ネイチャー」で物議の対象とされるのだろう。
 しかし、川島隆太氏はゲーム機による「脳トレ」の効果の是非については、出演したテレビ番組で「脳トレで頭が良くなるとは限らない」という発言をしたり、ネイチャーに掲載された「コンピューターを利用した脳トレについて、思考力や記憶などの認知機能を高める効果は期待できない」との論文に関して「ネイチャーの論文の結果は当然のこと」と見解を示したというから、ゲーム機についてはあくまでも娯楽という位置付けということか。自分の子供には週末一時間しかゲームをさせないというエピソードもある。
 ゲーム会社や出版社などのロイヤリティ二十四億円を「大金が入って遊びに行く暇があるなら、研究に費やしたい」と受け取りを辞退し全額を大学の研究室建設費用に充てたというから、単なる銭儲けに溺れている輩ではないようだ。

ブーム便乗する脳トレ

 問題なのは、このようなブームに肖り疑似科学による悪徳商法を画策し銭儲けをする輩の出現である。
 任天堂DSでは「脳トレ」ブームで、七田式で知られる七田眞(故人)や新日本速読研究会の川村明宏といった独自の「脳トレ」を商材としているグループが次々と「脳トレ」に因んだゲームを発売した。
 七田式は「脳トレ」を商材にする業界では老舗であり、ブーム以前から七田式教育法は知られており効果の程は定かではないが東京理科大学理学部数学科卒の七田厚社長が中心となり通信教育やスクールを全国展開している。

実績不明の誇大広告

 経歴不詳な上、インターネットに異常な程アフィリエイト広告を垂れ流しているのが新日本速読研究会・会長の川村明宏博士(西新宿パークタワーN三十階のレンタルオフィス)だ。
 脳トレに因んだその商材は頭を良くする速脳術・速読術・記憶術で、その触れ込みは「左脳を二倍、右脳を二十倍にします」「アメリカの研究で証明されています」「一日に覚えられる量を数十倍にし、五百四十ページの本を二十分で読めるようになる」というものだ。
 他にも「視力がどんどん回復していきます」「効果はレーシックなどのレーザー手術と同程度」「九十七%が実感」「十四日間で回復」という視力回復や認知症防止と色々あるが、いずれも誇大広告の臭いがプンプンする。根拠を示す臨床データはあるのだろうか?
 これらの広報活動に精力を注いでいるのが川村博士を名誉会長とする潟iレッジアクション(代表・坂本憲彦)が運営する「日本脳力開発協会」(北区赤羽一―二十五―三)である。「日本能力開発協会認定の講師資格を取得し安定した収入を得よう」という触れ込みでインストラクター養成講座の勧誘を行っている。体験セミナーでは速読トレーニングと称して、物体が秒速で動き回る映像を参加者に見せ、見る前と後の文章を読む速さを計測し、僅かなトレーニングで速読術が身についたことを実体験させるのだが、参加者はその効果に「おおっスゴイ!」と歓喜の声を上げるのだが、特に参加した高齢者には言っておくが、手持ちの書物をペラペラと素早く捲り、目で文字を追うだけでも同様の効果を得られることをお家の人は知っていると思うよ。これは一言で説明すると「目が速さに慣れる」という当たり前のこと。だから、読む速さを訓練で速くなるということ自体に否定はしないが、表現の誇張と記憶力といった脳開発にまで及ぶ商材はいかがなものか?
 例えば、初めて新宿駅に行った人は乗換えや出口に戸惑うが、二度三度と通って入るうちに迷うことは無くなるのは何故だろう?レーサーは初めて走ったコースより、走り慣れたコースの方が速く走れるのは何故だろう?DSのゲームを何度もやると上手くなるのは何故だろう?それは繰返すことでそのことに慣れるということである。
 つまり、新宿駅では慣れている人も初めて行く駅では戸惑うし、いつものコースで速いレーサーも初めてのコースでは上手く走れない。ゲームが上達したからといって右脳や左脳が何倍にも機能がアップした結果とはいえず、それらは「慣れ」であり、右脳や左脳が発達したというのは「錯覚」であるというようなことをハーバード大学の科学者は言っているのだ。
 ところで余談だが、「日本能力開発協会」は北区赤羽にある学習塾の大手「日能研」の大きなビルに隣接するマンションの一室にある。近所に七田式の「日本脳力開発研究所」もある紛らわしい立地にあるのは「錯覚」を狙ったものか偶然か?

経歴不詳の教育学博士

 また、川村博士は自らのプロフィールを「教育学博士」「名誉情報工学博士」と公表しながら、何処で博士課程を修了したのかを伏せている。
 講義やセミナーで登壇する際には「私のプロフィールについては既にご承知のここと思いますので省略させて頂きます」と言って必ずはぐらかすのは何故だろう?我が国内における博士の称号は学位であり、大学など高等教育機関や学位授与機関における学士及びそれと同等の学力があると認められた者が、大学院の博士課程あるいは博士後期過程を修了することで取得できるもので、名誉である博士を標榜しながら学歴を伏せる者は皆無であり、個人情報保護を理由に伏せるのは理不尽である。もったいぶらないで教えて欲しい。
 まさかお笑いコンビ・浅草キッドの水道橋博士のようなノリで博士を標榜しているんじゃないだろうな。


どこの博士か明記せよ!消費者の為に

理論より立証せよ

 川村博士は三十年の研究実績という「理論」を唱えているが、根拠と実証に乏しく「理論」というより「自論」にしか聞こえないので、ここらで「私はこれで東大に合格してみせます」とか「私はこれで司法試験に合格しました」というようなチャレンジ精神を自ら示して立証して欲しい。
 商材の全てが本物なら、当紙は国難を救う担い手とし、川村博士を文部科学大臣に推奨する運動を全国展開するぞ〜。その前に、この博士、徹底的に調査する必要がありそうだ。

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