戸田市長選挙神保国男当選で多選政治がスタート

(敬天新聞4月号)

 日本にある一七二七(三月三十一日現在)の市町村のうちの一つである埼玉県戸田市(とだし)。人口・一二一九八八人(有権者九一八〇四人)の地方都市である。戸田という文字ヅラからは「戸田?伊豆にある海岸だっけ?」と思う人の方が全国的にも多いだろう。その伊豆・戸田は「へだ」と読み、ここも特段有名な場所でもないわけだが。
 ところで当紙の本社所在地はこの埼玉県戸田市である。そして先日、三月二十一日にこの戸田市の市長選挙が行われた。
 当選したのは神保国男。この人間はこの選挙戦で四回目の当選、つまり多選を果たした。
 戸田市民が選挙に興味がないのか、前回の選挙は候補者不在で、この神保国男が無投票で市長となり、今回の投票率も三十八パーセントという低投票率。筆者も期日前投票に行ったが、投票会場には運営スタッフばかり十人以上も無駄にウロウロしているのに投票者は見当たらなかった。
 こういう遊び半分の選挙スタッフにも日当出るんかいな?と訝しく思いつつ投票した。
 立候補者四人中、神保が二万票、残りは民主党候補と共産党候補が約六〇〇〇票づつ、無所属の印刷屋さんが一〇〇〇票という得票数で、神保の圧勝だったわけだが、まあこの政治騒動の中、もう少し無党派層が動くと思いきや、とんでもない投票率で、政治に関する期待薄な自治体ということが露見したわけだ。

 神保国男現戸田市長が初めて戸田市長選挙に立候補した時は、その当時の市長(斉藤純忠氏)の多選を批判していた。
――一人の首長が長くその自治体を統治することは、市長と行政との相互依存から癒着が始まり、権力一極集中により馴れ合いから贈収賄が横行し、その市が利権屋以外の一般市民が損をする不幸な市になる――
というようなことをかつて政治家を志していた神保は主張していたそうだが、自分がその座にいったん座ると、
・・・・・・主張は一変。
 今回の選挙においても、神保の宣伝カーから聞こえるウグイス嬢のスピーチには「長期に戸田市を見守り続けてきた神保市長がこれからも長く安定的に戸田市を守り育ててゆきます」なんていっていて、長期政権は「善」であるという主張を軸としていた。
 選挙運動といえば、神保に限らずどの候補者も、特に戸田市民の心に訴えかけるような活動はしてなかったんじゃないだろうか。神保が長期政権を「善」とすりゃ、他の候補者は揃って「いや長期政権はよくない」を連呼するだけで、自分ならどうするという自身のアピールが欠落していたように思う。
 だからこそ神保を含めた四人の候補者が、公選法を度外視して形振り構わぬ大声で夜遅くまで選挙カーで走り回ったにもかかわらず、この低投票率だったのだろう。

 多選とは、今回の戸田市長に神保国男が当選したこと、つまり同じ人間が選挙で選び続けられることを指す。地方公共団体レベルにおいては、行政のトップである市長の多選は弊害の方が多いため禁止しようと声を挙げる人も多い。しかし反対するものが現地方政権を握っているため、多選禁止を条例として成立させた市町村は、日本国内で皆無である。
 多選禁止より弱く、拘束力のない「多選自粛条例」というモノがある。多選を禁止まではできなくても「自粛」するよう努力規定にしている条例のこと。実は埼玉県は国内唯一、県知事の「多選自粛条例」が努力義務として置かれている県である。多選禁止の弊害は充分認知されていると思われたのだが、その県内の戸田市が見事に多選自粛がされることなく、嬉々として多選市長を誕生させたのだから有名無実ともいえるか。
 兎に角これから戸田市は多選市長が市政を仕切るモデルケースとして注目されることになる。神保国男も多くの面でビジネスに制約が出てくることだろう。今まで見逃されてきた、神保が代表である戸田市議会の党派「平成会」が市議の多数を占め、市長と市議が議会や選挙で協力し合うような構造も注目される。不正も監視される。考えるに、長期的にはこの結果でよかったのかも知れないと思われる。

良識派自民党県議も神保多選を危惧していた
(クリックすると神保の多選と市政の停滞を憂う

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本紙特集:埼玉県戸田市の政治行政市議会汚職選挙違反など

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