2009/10/05

東急・田園都市線「宮前平駅」横断歩道を渡りローソン横の坂道を上ると大きなクレーンの手前に大小の看板、黄色い建設反対の無数ののぼりが石垣の上から下の土手まで立てられた毎回お馴染みのルフォン宮前平の建設現場である。
農村特有の地縁血縁で強く結びついたこの地区での旧家が不動産業者の罠に嵌り困っていたのを弱みにつけ込んで更に騙しサンケイビルが買い叩いたからこのような反対運動を受けているのだ。宮前平は駅の北側は東急などが分譲地を開発して同時期の住民ばかりなのでそんな心配はないが、南側のこの地区は昔からの地主ばかりだしマンションも地主の賃貸用が多く分譲のものはすごく少ない。サンケイビルは購入希望者にどう説明しているのか知らないが、ルフォン宮前平の購入者はこの地縁関係の緻密な土地柄に馴染んでいけるのだろうか?
この問題のルフォン宮前平の現場に400年続く旧家があり駅至近の1000坪の自宅周辺の土地に野村不動産が目をつけて相続税に窮していた前所有者を、法律的に且つ経済的に締め上げて土地の引渡しを迫っていた。エリアリンクの資金提供で問題を解決して裁判にも勝訴し「覚書」に基づく共同事業を行おうとする前所有者に罠が仕掛けられてくるのが前回までの話だった。
前所有者と野村不動産との裁判に決着が付くが、それを不服と東京高裁に舞台を移して(同じ建物だけど)争っている頃に、海の向こうのアメリカでは無理して組んだ住宅ローンが次々に破綻していた。いわゆるサブプライムローン問題である。経済紙の中では4月頃にその報道を日本に伝えていたが、ほとんどの人はアメリカの出来事だと気にする事はなかった。
それよりも姉歯設計士から始まった耐震偽装のマンションなどが次々に報道され、デベロッパーの倫理性や建物の安全性に疑問を持った購入者が慎重に検討して新築マンションの購入を控えたために売れ行きにブレーキが掛かった。
役人も自分の責任を逃れる(表向きは国民の新築住宅への信頼を回復する)ために平成19年6月に建築基準法が改正されてマンションや建売住宅を含む全ての建築物の建築確認申請を審査する工程が複雑になった。そのせいで建築確認申請が中々許可されず(早い話が検査方法は定めたがそれを審査できる人材がいないので勉強・育成させるまで申請書類を山済みにしておいた)にマンションデベロッパーから街の建売販売業者まで大きな影響が出た。資金力が弱い中小デベや工務店が次々に破綻していったのである。
無能な役人の体面のために善良な中小企業にしわ寄せが来るのは毎度の事だが、今回は大企業にも影響が大きかった。確認申請を初め建築の規制が厳しくなったことと原材料の大幅な値上がりで建築コストが10〜20パーセント値上がりしてデベの新規物件の試算内容が大きく変わりそのしわ寄せが用地の仕入れコストに跳ね返ったのである。それで、マンションデベロッパーは用地の仕入れコストを見直し用地の仕入れを控えると共に今まで容認されていた仕入れコストを大幅に下げたのだった。
大手、中小を問わず建築コストの値上がりに対する対応で取得用地の仕入れコストの見直しに追われるデベロッパーの中で、天下の野村不動産はさすがに全く反応が違ったのである。元々、野村不動産が敗訴した原因は(雁字搦めにした)売買契約を急ぐあまりに、契約の書類に不備があったのだ。その不備について2億円を上乗せすることで解決したいと和解案を申し込んできた。他のデベが土地の仕入れを控える中でさすがは野村不動産である。
しかし、前所有者はあくまでエリアリンクに義理立てしてこの申し入れを拒否したのである。この案で和解するだろうと思っていた裁判官もこの前所有者の判断に驚きを隠せなかったようだ。これほど意思が強かった前所有者も、第二審の裁判が続く中で心底疲れていって、障害が多い共同事業について興味を失っていったのであった。
エリアリンクについても、控訴されてから佐久間取締役が直接宮前平の前所有者の事務所に訪れるようになり控訴審の成り行きを気にした。前所有者は佐久間氏とは良く話をしていてある程度信用できる人間と思っていたので正直な意見交換をしていた。だから、エリアリンクの懐具合が「共同事業に関する覚書」を作成した時期よりだいぶ悪くなっている事は察知していた。
最初の頃は、手持ち資金が100億円あるなどと豪語していたが、次第に強気の発言が少なくなっていった。銀行からの融資が思うようにいかないとの話も聞いていた。平成19年の夏頃には三菱東京UFJ銀行が融資を打ち切ってきた(多分最初)と愚痴をこぼしていたのを記憶している。この年の4月だったと思うが金融庁より各銀行に不動産融資の自制をするように通達が出たはずである。
だから不動産業者に対してその頃から金融機関の融資が厳しくなったのだが、前所有者が受けた印象ではエリアリンクは融資が控えられたというよりは貸し剥しを受けているようであった。佐久間氏はよく前所有者の事務所に訪れては融資の不調の愚痴をこぼしていた。事務所に訪れたあるときは、蒼い顔をして「三十数行の金融機関全部に融資を断られた。横浜銀行に至ってはエリアリンクには1円も貸せないと言われた」と落胆していた。
「融資が受けられないので今期のうちの会社(エリアリンク)の業績は滅茶苦茶に下がる」とも言っていた。事実、その頃のエリアリンクの株価を見てみれば、平成19年の春先456月頃は7万円台だったが、それ以降は急降下して決算発表の平成20年2月には8千円代にまで下がっていった。
しかし、資金繰りが厳しいからと「共同事業に関する覚書」を解除したいとか、共同事業を再検討したいとか、それに伴って提供された資金についての話し合いなどの話は、佐久間取締役の口からは一切出なかったのである。
担当の佐久間取締役が前所有者と友好を深めていた頃、エリアリンクの林とトラストスペースの星野は別のことを考えていた。前所有者は、エリアリンクを共同事業の相手と思っていたのだが、エリアリンクやトラストスペースは前所有者の事を美味しそうなご馳走としか思っていなかった。
この時点ではすでに共同事業で時間を掛けて利益を上げるなど考えてはいなかったのである。或いは最初から仕掛けていたのかも知れないのだ。悪党の考えというのは良い悪いは別で、どうすれば一番儲かるかで始まる。前所有者への資金提供で一番重要だったのは大蔵省が持っている、野村不動産の仮処分にも優先する抵当権を取得する事と、いかに曖昧な内容の契約書ではなく覚書を作成する事にあった。
ここで曖昧な内容というのは如何なる方向へも主張できる内容という意味である。そういう意味では、考え方が野村不動産とは正反対であり、契約(民法上の契約行為も含む)について野村不動産の対処(契約条項で相手の行動を縛る)が正道だとすれば、エリアリンクの対処(相手の行動に自分の都合の良い主張をする)は邪道(つまり汚いやり方)である。それについてはどういうことかあとで説明する。
話を戻して、どうすれば一番儲かるか・・・・国税局の公売も解かれた宮前平駅前に誰もが欲しがる優良不動産がある。・・・・そして「共同事業契約」による公売の解除で485坪については国税庁(大蔵省)から譲り受けた法的根拠で抑える事ができる。・・・・野村不動産の仮差押は残っているが、競売をかければ職権抹消になる。
・・・・野村不動産がどうしてもこの土地を欲しがっているのは控訴を申立てたことで理解できる。・・・・サブプライム問題で外資系金融機関を筆頭に資金の引き上げで融資どころではない。・・・・だからこの金額では入札者はまずいないので低額で自己落札できる。・・・・野村不動産とは業者同士での話し合いが出来る。
そこで導き出された悪党の結論は・・・・エリアリンクとしての「最大の儲け方」は、国税庁(大蔵省)から譲り受けた抵当権を法的根拠に前所有者の自宅の土地に「競売」を申立て、「自己競落」することだった。そして、それを欲しがっている野村不動産に渡せば、濡れ手に粟のボロ儲けになる。
控訴後は、佐久間取締役が前所有者の事務所に訪れて裁判の進行状況を詳しく聞いていた。裁判はと言えば、前所有者が野村不動産に売却しても良いとの供述をした頃に、野村不動産も今までの積極的な対応からトーンが落ちてきた。その後は不動産を取り巻く環境が変化してきたので、天下の野村不動産も方向変換したのか裁判を長引かせているばかりで進展がない時期であった。
そこで、エリアリンクは直接交渉するからと野村不動産に対する委任状のような書面を作成して前所有者に署名を要求してきた。しかし、代理人である弁護士を立てて裁判中であるから前所有者は断った。弁護士以外のところが勝手に交渉をする事は裁判に影響するから断るのは当然である。これは、代理人である島弁護士にも相談したし、訴訟中の弁護士に変えて弁護士でもないエリアリンクに委任状を出すのはできない相談である。しかし、今考えてみればそれからエリアリンクの対応が変わり始めた。
突然、平成19年12月下旬、担保だった前所有者の自宅485坪がエリアリンクにより競売を申し立てられた。
平成20年1月中旬頃に自宅へ裁判所より「競売開始」の通知があり寝耳に水の前所有者は本当に驚いた。これは、三者で調印した「共同事業に関する覚書」に関する事だし、エリアリンクを紹介した「トラストスペース」に問い合わせると、「覚書」があるから競売になんかできるはずがない。すぐに取り下げさせる」との返事だった。
そういえば佐久間取締役が、「エリアリンクは上場企業なので監査法人がうるさい。Oさんへ事業資金も贈与となる可能性があると指摘されて色々指示されている」などと言っていた事を思い出した。「あくまで『ポーズ』として競売をするかもしれない」と冗談交じりに言った事も思い出したが、前所有者はエリアリンクの意向ではなく佐久間取締役の冗談だと当然ながら受け取っていた。
なぜなら、共同事業をやめたいとか、資金を返済して欲しいとかの話はエリアリンクから一切なく、もちろんOさん側に不備はないのだから、競売などかけられる必要性もなく、必要がなければ「『ポーズ』としての競売」なんてものは冗談以外にありえるはずもなく、普通の世間話程度の会話の中での言葉だったからである。本当にそういう意向なら、「覚書」の解除の申し出や、提供を受けた事業資金についての返済の打診や請求を正式にするはずである。
前所有者は、共同事業者でエリアリンクへの仲介者である「トラストスペース」の言葉を信じて競売が取り下げられるのを待つ事にした。前所有者自身、「覚書」については遵守しておりなぜ競売にかけられるか理解できないから、佐久間取締役が言った監査法人へのポーズでの行動だと思い決算が終わればすぐに取り下げられると思っていたのである。しかし、悪党の計画は着実に進んでいたのであった。(つづく)
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