人材派遣アンツ・ユニティグループと他の偽装請負派遣グループ

09/01/10

請負の本来は一人親方の職人さん

 その点、アンツらも弱い立場の被害者となりうる。企業が他社の労働者を指揮命令して働かせるには、労働者派遣法に基づいて使用者責任や労働安全上の義務を負わなければならない。
 偽装請負だと知っていても、知らん振りを通せば上記の金のかかる義務責任を負わずに請負契約で請負労働者として使い捨てればすむこと。
 本来の請負は、請負業者が委託業者から独立した場所で自前の工場設備用具を備え、そこで生産した商品を委託者に納める。委託会社からの指揮命令がなくっても、委託会社の社内に自分とこの社員を突っ込んで働かす事は請負業者のカテゴリーとしては外れる。

 本来の請負は、内装業者や土建屋の「一人親方」の兄ちゃんが、脚立やヘルメットを積み込んだハイエースで現場に行って、仕事を終えて(納品して)金をいただく、ってのが請負業者の基本である。
 ちなみにアンツグループは、労働災害が起こった時のために、労働者一人一人と「請負契約」をするというとんちんかんな雇用形態をとっている。
 派遣切りといって、メーカー等の委託企業が責められているのは、アンツらのような中間の請負業者は契約上、非力で、責めてもしかたがないカツカツで責任追及は出来ない、と攻める側も考えているのかも知れない。
 グッドウィルを責めていた頃は、労組やユニオン連中なども派遣屋を突けば良いと考えていたのだろうが、基本、人材派遣会社・業務請負会社は切られれば終りの弱い立場というのが最近分って来てキャノンなどのメーカー攻撃に転じたのだろう。

 結局、アンツグループにしても請負労働者をもう必要ないと、佐川急便他の委託会社から言われたら、労働者達に次の仕事場を探してやる余力もないだろう。今までも佐川急便などのメインクライアントの請負仕事にベッタリでおいそれと新規開拓など出来なかったろうし、今開拓して持っているクライアントは請負金額の安い同業者間の回し業務のようなものばかりだから大変といえば大変で、労働者の事なんか考えていられないかも知れないが。
 委託発注企業に、労働者の指揮命令権を持たす形で請負契約を交わすなど、そもそもナンセンスで派遣と請負のカテゴリーをごっちゃにした出鱈目な契約内容なのだが、アンツグループをはじめ、派遣会社がグループトップで周囲を請負会社で固めている今時の典型的な偽装請負グループは大体が、こういったずさんな契約を委託発注元と結んでいるようだ。

偽装請負をやる悪役もけっこう弱い立場だそうで

 こういった時、偽装派遣という仕事を貰っているアンツグループ側の方が立場が弱く、足元を見られていて、尚且つ、自分達のスタンスが分っていない事が多い。
 どんなに突っ張ってベンチャーだ起業家だと虚勢を張っても、請負業者は文字通り、請負が仕事の下請業者以上でも以下でもないのであり、偽装請負により労働者派遣法違反の責任を取らされるのも、自分達であり、所詮は使い捨てられる身だ。
 アンツの請負労働者を佐川が指揮命令する事は、佐川急便としても職業安定法違反を犯している。

  しかし佐川急便はいざとなればアンツに罪を被せる手立ては幾らでも持っているのだろう。現に、アンツグループには何度も労働基準監督署が入っているのに、佐川急便にはそういった気配さえない。十分な防波堤の役目をアンツグループは担っているのだ。
 ユニティはアンツの子会社ではなく、規模的には親会社みたいなもんだと前回記したが「コーリングフューズヴィ」もアンツグループというよりはアンツの取引先というか請負業務の貰い先らしい。まぁ偽装請負グループという視点から言うとグループと呼んでも間違いはないが……。

 関係ないが労働者派遣法がいろんな業種への労働者派遣を解禁しているが建設現場への労働者派遣は未だ許されていない。しかし、建設現場なんて一番遺法派遣がまかり通っていそうな荒っぽい現場であるが、みんな請負という形で入っており、建設は流れ作業じゃないからパーツ分けがなされていて遺法派遣と言い難いものがあり今まで中々法律的にも縛りにくかったようだが、矢張りやり過ぎてしまうと突かれる。
 殆どの建築請負会社は、名刺には絶対「建設『派遣』会社」と刷ることは出来ないがやってる事は派遣業であることが多い。

  ほとんどが遺法のまま放置されてきたが、先日は神奈川県相模原市の「建設請負」のトウキュウ総建という東急グループとは一切関係ないであろう会社が、我がまま放題やり過ぎて、健康診断書を偽造して取引先に提出したり、労働者に健康診断を受けさせないまま重労働をさせて、なんとこの2008−9年には珍しい、「結核」などという病に罹患させて大騒動になってしまい、これから社会的制裁を受けようとしている。
 ここなんか一社だけ狙い撃ちされた様相だが、建設請負ならず、アンツグループらのような軽作業請負業務会社だって、目立ち過ぎやり過ぎは禁物なのである。
 アンツグループだけに限らないことだが、労働安全衛生法により、常時雇用の労働者に年一回の健康診断を受けさせる義務は怠ることは立派な法律違反なのである。

ユニティ・アンツグループ、そして佐川急便は今後の社会保険料支払いラッシュをどう乗り越えるか?

 まあ、法律違反を問えば、請負業務会社の多くは「基本的な義務」であるはずの、労災保険・雇用保険などの社会保険に殆ど加入していないのだから、今更、健康診断も何もないだろう。
 ところで、アンツグループ、特にユニティなどの大口取引をしている請負業者が一番触れられたくないのは、この労災保険・雇用保険などの社会保険未加入問題についてなのだそうだ。
 労働基準監督署やら社会保険事務所やらに追及されてしまうと、2年間に遡って未払い分の社会保険料を納めないといけないらしいのだが、そこらの小さい請負業者ならまだしもユニティのように年間の請負業務取引料が80億もあれば……。

  本来納めなければならない社会保険料だってケタが違う。
 しかも、業務の多くは薄利多売の貧困喰い商売だから薄い利潤の中から数億円もの未払い分を支払う事は至難の業。こうなれば、会社を倒産させて支払いを逃れるしか手がないかも知れないが、そのような脱法行為で支払い逃避しようとする会社を現取引先がどう思うかが気になるところ。

 その点、アンツの上のユニティさんやコーリングフューズヴィさんはどう腹をくくっているのか?また、佐川急便他のアンツの取引先サン達はこの先、どうするつもりなのかを伺いたいところ。
 偽装請負がここまで広く知れ渡り、佐川急便などの委託元も「いや、自分だけは知らなかった」とは言えないはず。そこの所、立場が強いものとしてきっちり責任を取るのか、アンツグループらに全て被せて自分は安全圏でやり直すのか興味津々である。

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