(敬天新聞10月号)
東急田園都市線宮前平駅下りホームに立つとサンケイビル・ルフォン宮前平、建設反対≠フ看板と黄色いのぼりが目に飛び込んでくる。このルフォン宮前平の建設現場には昨年まで、O氏という十七代に亘り宮前平周辺の土地を所有してきた由緒ある地主の自宅が建っていた。
最後の当主O氏は農業や造園業の合間に地元警察関連の団体や「農協」の名誉職も兼任する地元の名士。ところが、バブル景気の狂乱地価のときに広大な所有地の相続が発生。十二億円の相続税の半分は自宅以外の不動産を売却する事で切り抜けた。そして残りの相続税などを十五年に亘って分納し、処分できる所有地は処分してきた。
しかし所有地の売却代金を納めても、なお譲渡益税や延滞税・利子税が加算され、一向に減らない税金に遂に自宅売却を決心。O氏宅は東急田園都市線宮前平駅の直近という好立地であったため、数多くのマンション業者が名乗りを上げた。
公平を期すために数社に絞ったマンション業者で「入札」することにした。しかし、その入札業者群に入れなかった野村不動産が、新たに「農協」がらみの縁故関係で割り込みしてきた。他のマンション業者は仲介業者を通じて交渉してくるのに対し、野村不動産は農協のコネを武器に当主に直接交渉してきた。次第に競合他社は排除され、最終的にO氏らは千坪の土地を野村不動産と売買契約した。
野村不動産は売買契約をしてから、契約条項にはない取決事項を徐々に反故にし始めた。野村不動産に対する疑念を抱いたO氏は野村不動産に再契約を前提の手付金の返金と契約の白紙撤回を申し入れた。しかし野村不動産は、O氏側からは解約する事が容易に出来ない形に巧妙に細工された契約書を盾に取り、自分の違約は棚に上げ逆に契約の履行を求めてきた。
この理由は、野村不動産に圧倒的に有利に作られた当初の契約を白紙に戻してしまったら、宮前平駅前という超お買得の物件を二度と同じ価格で再契約することは不可能と、野村不動産が判断したからだろうと不動産業者は言う。
さらに野村不動産側は「契約履行」の裁判、つまり「野村に土地を取得する権利がある」という事を認めさせる裁判を起こしてきた。そして、同時に当主らの千坪の土地に仮差押≠かけてきた。この仮差押≠ヘ前述の「契約履行」の裁判を原因として、野村不動産以外の第三者に不動産を売る事は裁判で白黒つくまで売ってはならぬという売買禁止の仮処分というもの。
裁判所が「決定」したものではないが、「仮処分」といえども処分であるから、これにより今までO氏と取引していた銀行などもO氏の不動産を担保とした融資などが出来なくなる。これが野村不動産の「兵糧攻め」現代的にいえば「経済封鎖」というヤツだ。
野村不動産はO氏をがんじがらめにした上で宮前平駅前のおいしい土地の引渡しを迫ってきた。時を同じくして、国税庁の担当者の転属があり、新任の担当者の独断でO氏の不動産に対する国税局の「公売」の申立てがなされた。
野村不動産の経済封鎖に喘ぐO氏は、野村の言うままに売り渡す事も考えたが、約束を破ってまで強引に買収しようとする野村不動産のやり方には納得できなかった。そこに東証マザーズ上場企業エリアリンク株式会社(株価コード8914林尚道代表)が白馬の騎士として登場。
エリアリンクはトラストスペースという不動産業者(現在は廃業)を通じ、O氏に対し所有不動産を利用した土地活用共同事業≠提案してきた。エリアリンクが言うには、「O氏所有の不動産で野村不動産に代わって共同事業をやりたい。ついては現在トラブルとなっている野村不動産との訴訟費用や話し合いがつけば契約解除の費用、国税局に支払うべき税金も全て肩代わりする」とのことだった。
野村不動産という大企業相手に、仮差押を掛けられたまま資金繰りもままならず、事業に支障をきたし、訴訟費用を捻出が精一杯だったO氏は、エリアリンクの提案を了承した。さっそく、エリアリンク・O氏・トラストスペースの三者間で「共同事業に関する覚書」を作成し、エリアリンクからの資金で国税局との「公売」問題を解決し、裁判費用も提供を受け、一審では勝訴した。
(しかし、後日どうしても諦められない野村不動産は控訴してきた)
O氏は裁判に勝って一安心すると共に、エリアリンク株式会社という新興の不動産企業に対し、地獄に仏だと感謝し、絶大な信頼を抱いていた。だがエリアリンク及び子飼いのトラストスペース側は、O氏の思うように善意で動いていたわけではなかった。
国税局の公売も解かれた宮前平駅前の優良不動産があるわけだ。野村不動産の仮差押はあるが、そことは話し合いが出来る。そしてエリアリンクはO氏との「共同事業契約」による公売の解除で千坪の土地の半分に法的効力を得ている。エリアリンクとしての「最大の儲け方」は、O氏を無視して、この土地に「競売」を申立て、「自己競落」することだ。そして欲しがっている野村不動産に渡せば、濡れ手に粟のボロ儲けになる。
そして驚いた事にエリアリンクはこの「最大の儲け方」を実行、つまり競売を申立ててきた。エリアリンクの突然の背信行為に驚いたO氏は、当然エリアリンクに苦情を申し立てた。エリアリンクは「上場会社の決算における監査用のポーズだから適当な時期に競売は取り下げる」とトラストスペースを通じて弁解。
入札期日近くになりエリアリンクはO氏に提案。「競売期日の延期にダミーの売買契約が必要」として、@O氏―トラストスペース間に売買契約締結。A延期期間に競売手続きによる資金の保全を金銭貸借契約書に切り替え。Bそれに従い競売を取り下げ…など。
O氏がトラストスペースとのダミーの売買契約をエリアリンクの本社で行い、一度目は競売の入札期日が延期された。ところが「再入札」期日近くなっても、エリアリンクは金銭貸借契約や競売の取り下げをする様子を見せない。このままエリアリンクに競売を実行されれば、O氏は一七代続いた所有地をハシタ金で奪われるも同然となる。
エリアリンクによる競売実行を避けようとO氏が悩んでいた所に、サンケイグループのサンケイビルが買収に名乗りを上げた。サンケイビルの提示した相当「高額」な買収金額にO氏は安堵し一任する事にした。
しかし、「再入札」期日の直前にサンケイビルは買収金額の不当な引き下げを要求。そしてサンケイビルとの間に「田中建設」という会社を挟み、一度田中建設に購入させる事を指示してきた。
サンケイビルの再提示した金額は野村不動産と契約した金額の半値。徹底的に足元を見た買い叩きになるが、O氏は競売を避けるため指示に従うしか方法はなかった。
同時にエリアリンク配下のトラストスペースが、ダミーの契約書を理由に以下のような恐喝紛いの要求をしてきた。
「二重売買じゃないか!一六〇〇万円払わねば田中建設とは契約させない」
エリアリンク・トラストスペース連合としては自己競落が出来ない以上、任意売却の邪魔をするよう難癖をつけてでも当面の利益確保をしたかったのだろう。O氏は、目前の競売を避けるためだけに、トラストスペースの恫喝に屈し、売買代金から一六〇〇万円を支払い、サンケイビルの要求に従って、不当な安値で自宅を手放した。
関係者でどのように儲け配分があったか知らないがサンケイビルは田中建設よりO氏の自宅だった土地を買い「ルフォン宮前平」の建設開始。
エリアリンクは、更に追い討ちを掛けるように融資により名義を変えたO氏の所有する店舗付マンション(サンケイビルが取得したO氏の自宅とは別の不動産)に対しエリア側の所有権を主張し、テナントに入居する商店主にイチャモンをつけて回った(さすが昭和の地上げ屋あがり)。
O氏は現在も裁判で争っている。 つづく
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